【喪われた手帳 その2】

 

さようなら… って。 思ったけど。

 


どうやって行くんですか? おっさん、そこまで話してくださいよ。

 


田口さん… 田口さんか。

もしかして、さっきの電波は、田口さん本人…という可能性はないのか?


正直、この黒衣は、受信機としてしか使ったことはないが、

自分から送信することは可能なんだろうか。

 


私は黙ってしまった黒衣の前に再び座り、念じた。

田口さん。いらっしゃいますか。

どうしたことか私は異界へ飛ぶことができません。

なんとかしてください。


……。

すると、ノイズがかなり載っているが、

どこか遠くから、音がが聞こえてきた…

 


〔ピ、ピ、ピロリロ… ッザザーーー〕

〔鍵… 鍵は、ザzz-- ○%△±∵…だよ ザザーー〕



鍵??

 


〔 ザー 日誌は… ザザーーー ザザー に置いてもいいか。〕


なんか田口さんじゃない人に当たってるみたいだが、大丈夫なのか。

日誌とは? …そういえば資料棚にもそんなものがあったかな。


〔今から、ザザザーー の力を使って ザザー 転…しよう。

 だがこのことは、ザザー は内緒 ザザザーー …のだ。〕

 

 

転送?


そういえばそんな時空をいじれる科を学んでいた知り合いが

…居たような居ないような。今は学園内では見かけなくなっていた。

 


黒衣人形に留守電メッセージを設定し、郵便受けの辺りに置いた。

そして、ええっと…忘れ物はなかったかな。

と、身の回りのものをかき集めようとしている最中に、

体がどこかへ吹っ飛ばされ、飛んだ。

 


飛んだ、といっても、

舞い上がって天井に頭をぶつけるとか、そういう飛び方ではなかった。

真っ暗な水上スライダーを、凄いスピードで降り、時には登るような

一体どこへ進んでいるのだろうか わからない感じがした。


黒衣人形は玄関に置かずに握ってくればよかったか…

と思ったが、もう手遅れのようだった。

帰りはどうしよう、というところまでも私は考えていなかった。

 


そうだ、手帳が…